亡霊の少女を付き従え、鎖と鞭を自在に使いこなす斥候。音もなく忍び寄り、一瞬で先手を取り、絡め取って相手を殺す。その技量は闘技場などで表にも出ているが、タイラント級のブラッドトロールでも手も足も出ないまま嬲り殺すほど（実際には死が目に見えていたが）。
　斥候としての技量は高いが、それ以上に肉体的な虚弱さがあり、仲間からは常に命の心配をされている。本人は役目を果たすことに義務感を抱いているらしく、よく命を軽視する癖がある。戦場において自分の役目は多くは無いと判断しているために。
　ウィークリングであるために、翼を持ちながら飛ぶことができない。そのため、空を飛ぶ、ということに強い願望を抱いている。自由に空を飛ぶことのできるドレイクなどは嫉妬の対象であり、「もしも死んだらガルーダの翼を魔改造でつけてほしい」なんて遺言も作ってある。しかし、飽く迄も憧れは「自分の翼で飛ぶこと」。偽物の翼や、魔法で飛ぶこと。練技ではやした翼も望まない。ただ、この翼で飛びたい。【ドラゴンウィング】はそれに触れるものだが、速度が足りないのが難点。
　ルーンフォークの少女アイラと、ドレイクの青年ドラコにはやや特殊な強い思いを持っており、その二人の将来を見守っていきたいと思っている反面、ドラコに対して（少しばかり重たい）恋心を抱いている。アイラ側からは認められているものの、ライバルの意味を理解出来ていないなど情緒と常識に少々問題があるようだ。
　本人は自分の戦力を非常に軽く見積もっているが、恋を発端とする内心の迷いを捨てた結果求道者としても高度にまとまった力を得ている。手にした魔剣〈黒鎖連刃〉は黒く小さい鉄板を細い鎖で幾つも繋いだ武器であり、かつて別れた父親の持つ黒い鎖をモチーフにしている。心眼に開眼し、恐ろしいまでの精度で攻撃を避け、文字通り必殺となった〈黒鎖連刃〉はひと触れで容易く命を断つだろう。もっとも、当たりどころによるが。
　長い空虚を超え、ようやっと見出した未来のために、彼女は戦う。

　魔神の天敵という噂もあるが噂は噂でしか無いのであしからず。また、百合の気も無い。
　身長169cm、体重38kg。ガルーダウィークリングであるために骨格、筋肉、共に非常に軽い。とはいえそれでも人間サイズであるために異常に軽くとも相応の重さがある。さらに言えば全長5m以上の鎖を約20本、鞭系統が数本、投槍4本、剣が2本、石ころサイズとはいえ魔晶石が100個以上。低めに見積もってもその総体重は100kgを軽く超えていることは間違いない。それだけの重量を支えられる筋力がどこにあるのかは謎だが、ラクシア物理法則の下ではおかしくないこと……なのだろうか？
　表情は基本的に動かないが、嬉しいことが在ると僅かに微笑む。また、不愉快な時は僅かに顔を顰める。表情の動きは基本僅かなのでそこから感情を推察するには十分な付き合いの長さが必要だろう。
　髪は蒼に白が混じったメッシュを、短くまとめている。頭部の左側面からは朱と白の二色を持つ一枚の羽根が生えている。背からは基本色が朱色で羽根先が白い小さな翼が生えていて、感情に併せて微動する。
　ベルトに類似した布で、ボタンのない上着を纏め、下半身はスパッツをスカートに見えなくもない布で覆う、テレスティアではまず見ない服装をしている。バルフォール家が開発したらしいニンジャの服を、彼女用にデザインし直したもの…らしい。本人には軽くて動きやすいと好評だがそれ以外の装備が重すぎる。
　常に右足に細い鎖を纏わせており、外すことはない。身体と一体化しているといっても過言ではなく、誰もそれを外した姿を見たことはない。

　〈コンバットメイドスーツ〉に着替えた今では、青と黒を基調としたフリルを、外枠の側面にだけ取りそろえたメイド服を来ている。エプロンドレスをしっかりすれば完全に給仕にしか見えないだろう。なお、ルナのお古を直したもの。

[人族に恋をした]
[片親、もしくは先祖が人族]
[同胞、もしくは恋人が人族を好んでいる]

　ディルフラムにおいておおよそなぜ存在できたかもわからない、ほぼ人族だけで構成された蛮族に支配されていない村、ジャターユで育つ。母たるセラエノ・ジャターユは歌を得意とする肝の座った村娘で、父たる“黒鎖”ダハーカ・カラドリウスはとあるガルーダの集団から追放された戦士だった。父ダハーカの居たカラドリウスは“天の鎖”と呼ばれる始祖に連なる、絡み武器を扱うガルーダの集団であり、ダハーカはそこの12代目頭領候補だったが、兄に謀略で追放されたと言う。……とはいえ、その事情は娘ジャズに伝わることは無かった。
　親の事情などまるで知らないまま、幼馴染の少年に恋のような感情を募らせたりもしながら成長し、12歳のある日、十三魔将アレクセイによって村は破壊され、父も母も殺され、村人のすべては殺されるか奴隷となった。曰く、「この村はディルフラムを裏切り逃亡しようとしている」とアレクセイは言っていたが、事実かどうかはジャズにはわからない。生き別れた村人たちのその後の生死は不明だが、戦う力を持つものはほとんど居なかったため、おそらくは全員が死亡したと思われている。
　ジャズも当然のように奴隷となり、命と貞操だけは守りながら必死に生きた。父に教わった狩りと戦いの技術と魔法だけを武器に、母から教わった歌だけを心の頼りに。7年の時が過ぎ去り、彼女の精神は擦り切れた。心の支柱は折れ、生きる目的を失い、惰性で生存を守っていた。笑うこともできなくなった。感情は、枯れ果てた。たどり着いたフォグル闘技場で、彼女の人生は一変することになる。

　6年の生で壊れ果てた心を、2年の生活でアイラとドラコは解きほぐし、なくなった支柱となった。なってしまった。結果、彼女はこの二人に心から依存することとなる。亡霊の少女フロリアもまた大きな要因だ。家族となる相手をずっと欲していたジャズの、最初の家族。妹のような子となっている。
　2年の代行者としての生活はジャズの心を大きく変えた。昔のように、わずかながらにでも笑うことができる。

　根底には「世の中はなるようにしかならない」という考え方がある。起こったことはしかたない、できないものはしかたない、そういう諦観。家族の死、村の破滅、自分の夢すらどうしようもないと諦める。そんな気持ちを抱えて何年も生きて来たために感情自体希薄になりつつある（表情の硬さもそれに起因する）。諦観が先にあるため何をしても無意味、と考え、物事には受動的。何事も明確な拒絶はしない代わりに積極的な交流も行いはしない。
　しかし、身内になった人間には依存しがちな傾向がある。全てを失っているからこそ自分の柱になってしまう相手からは離れることができなくなってしまう。たいていの相手にはどんなに優しくされても一定までしか好感度が上がらないが、「理解してくれる」「認めてくれる」「受け入れてくれる」「支えようとしてくれる」相手にはあっさりと絆されてしまう。人族社会の都会に出たら悪い男に騙されていたかもしれない。
　何よりも恐れるのは「失うこと」。一度すべてを失ったために、得たものを失うことに激しい恐怖を顕にする。その恐怖は「どれか一つだけを失うくらいならすべてを失うほうがまだマシ」と言うほど。置いて行かれることは、死よりも恐ろしい。よって、死への恐怖はあまりない。もう会えないのは悲しくても、自分以外を失うより自分が失われるほうが何倍も良い。

　本名は「ジズ」。「ジズ・ジャターユ・カラドリウス」。愛称として「ジャズ」になる。これは“天の鎖”の一族が長すぎたり、短すぎたりする名前を名字と混ぜたり一部を切ったりして呼び、本名は親しい相手にしかしないという文化があるから。それに習い、本名をジズ、通称をジャズとしている。本名は恋人など親しい相手にだけ呼ばせるようにと言われて居るが……本人は、割りとそのことを忘れているらしい。
　父親ダハーカはレベルで言えば17に相当するネームドガルーダである。〈ビーストチェーン〉を生成するという特殊な能力を持ち、その鎖を操る流派秘伝めいた技を幾つか保有していた。が、それはジャズには受け継がれなかったので失伝した模様。
　6年間の生で心が壊れていたジャズは、好感度が非常に上がりやすい状態にあった。とはいえ、「親身になり」「家族同然のように接し」「なにかあれば絶対に助けると心配し」「信頼を向けてくれる」ような行動をしなければ好感度の最大値が上がらない仕様ではあったが、案外積極的に騙しにくる男にはコロッと落とされていたかもしれない。その場合、完全に依存し切るのでもう手に負えないことだろう。
　一度心が壊れてしまったことも相まって、いくらかの精神的な感情が削れているところがある。本来なら恋敵になるはずのアイラに向かう感情が「信頼」のみである当たりがそんな感じ。ただ、一応嫉妬的なものはあるのでドラコが仲間以外に手を出そうとするならもしかしたら怒る、のかもしれない。
　“魔神殺し”の名については良い思いは無い。風評被害である、と本人は思っている。実際、実績であるゴードベル殺しは偶然が全てだったからだ。とはいえ、心眼を得た現在であれば本当に魔神殺したりうる実力がある。案外真実なのかもしれない。

名前	好感度？	感情
ジグルト	90/90: 親愛	剣の無いドレイクにして、マリグナントである人。ディアデビルズの元リーダー。いくらか常識に欠け、心を余り慮らない人。悪意があるわけではなく、仲間への信頼も確かに感じる。……大事な仲間の一人。
ドラコ	110/120: きっと、これが恋	ずっと傍に居たい相手。アイラと、フロリアと、一緒に。ずっと。きっとこれが、恋。愛されなくてもいい、奪おう、なんて絶対に思わない。傍にいれれば、それで。……幸せになって。
アイラ	100/100: 家族同然	ドラコの従者、ルーンフォーク。一度私が殺しかけ、一度私を殺しかけた人。私を理解し、私を助けたいと言った人。私が全てを失ってから、最初に私になにかを与えてくれた人。……幸せで居てほしい、永く、生きていてほしい。
レヴィ	90/95: 親愛	斧を扱う豪腕のウィークリング。多少のことじゃブレ無い心の強さがある。何よりも、純粋に強い。横で戦うと、とても安心できる。……この戦いなんて関係なく、レヴィだけはずっと変わっていないのね。
ルナ	85/85: 信頼/隔意	元人間のヴァンパイア。かつては普通の少女だったのに、いつの間にか心が壊れかけている女の子。全てを捨てて、孤独に向かっている。昔の自分を見るようで、心が痛い。……きっと、私が触れては行けない相手なのだろう。
フロリア	100/100: 家族同然	成仏しそこねた地縛霊、今では背後霊。一度失われて、取り戻した人。私の、妹。全てを失った私の、最初の家族。一緒に居てくれることは、何よりも嬉しい。……いつか貴女が成仏するその日まで、共に居てほしい。
ステラ	79/80: 信頼	ルナのメイド。人間の少女。多重人格者。ルナが置いていこうとする人。……貴女は、それを許容するの？